うそとほんとすなとねこ

風の向くまま気の向くまま、自称読書家が今まで読んだ本を羅列する程度のブログです。

ジョージ・オーウェル『1984年』【前編】

どうも、沙猫です。

さて皆さん、失言って困った問題ですよね。
おありでしょうこんな経験。
雑学の大家だと周りに言われて調子に乗り、テレビのクイズ番組で自信満々に誤答した。
障害者は生産性が無いとか教育勅語は悪いもんじゃないなどと言って、政治・社会学系ツイッタラーに見つかり吊るし上げられた。
とにかく合ってると思い込んで言った事が(色んな意味で)間違っていて恥ずかしい思いをした。
わかります。沙猫もよくやらかしました。それで友達が二、三人消えました。

そんなあなたにぴったりの本があります。ちょっと難しいけど、間違いを無かった事にするには最適な答えを教えてくれるでしょう。
それでは聞いてください。ジョージ・オーウェル1984年』。


行き過ぎた共産主義社会を描いたディストピアとして70年以上(来年でちょうど世に出てから80年!)も読み継がれ、名前だけは知っているという人も多いでしょう名著『1984年』。分厚いし社会学みたいな堅苦しいイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょうが、意外と読みやすいものでしたよ。

まず世界観が驚きの連続でした――地球上にあった国々は大国連合3つのうちのどれかに統合され(例えば主人公ウィンストン氏が暮らすイギリスは「オセアニア連合国」の一部に、共産主義大国旧ソ連は「ユーラシア」我らが日本は「イースタシア」に)、3ヶ国の連合は日夜対立し続けています。
さて、オセアニア連合国を独さ……統治しているのが「偉大な兄弟(Big Brother)党」で、氏もこの党員です。総人口の一割にも満たない党員、その中でもほんの僅かな党の上級幹部が、国の大多数を占める無産市民(prole プロレ)階級の生活を管理しています。
この社会体制がまぁほんとに恐るべきものでして。共産主義の原則に乗っ取り食べ物から剃刀の刃に至るまで、あらゆる物資が配給制。さらには人々の精神すら思い通りにできるというんだから――寧ろ精神を管理しているからこそモノにも同様にできるらしく――全くぶっ飛んだ理屈であります。
で、どうやって「精神を管理」するか。簡単です。党ができなかった事を「聞いてたけど聞かなかった事」にすれば良い。この方法は「二重思考(double think)」といわれます。

例えば国で「戦況がうまくいってるからパンの配給を増やせそう」と報道されたとしましょう。国民には嬉しい事ですね。
ところが実際にパンが配られると、それ程多くもない、寧ろ減っている。誰だって何事かと疑うでしょう。政府に嘘つかれたと憤慨する人もいましょう。
そこで二重思考法の出番です。

「別に党は配給増やすなんて言ってない。いいね?(念押し)」
国民「アッハイ」

党員もプロレもそう思い込み、党は守れない約束なんかしてなかった事になります。

 

あとは簡単。過去の公式な記録について、プロレ諸君は「(ほんとは聞いてたけど)聞かなかった」ふりをします。党員諸君はそれに加えて、過去の公式な記録を改ざんして(「ほんとは」聞いてなきゃできない事です)思い込みを真実(笑)にするだけです――真実は各人の頭蓋骨の中に封印されたのです。
ね、完璧でしょ?

 

「ごまかさないで対策とりゃいいのに」と思った人が画面の向こうに何人いる事でしょう。ウィンストン氏もそう考えていました。でもそうできないんです、党がミスをした事を認める事になるから。偉大な兄弟は間違えませんから。

 

「偉大な兄弟の判断は絶対」である理由は後で語るとして、今は氏がどうしたかを話す事にしましょう。
「なんかちがう」と心にもやもやしたものを抱えた氏は、こっそりと日記に思いの丈をしたためます。プロレの町に、監視の目が及ばぬ隠れ家を持ちます。プロレこそが(意識さえすれば)党を倒す切り札になると信じます。
そして偶然にも党の中に、自分と同じ考えを持つ女性を見つけ、密かに交際し始めるのです……

 


これ久々に長くなりそうな話ですね。

2パートに分けようと思います。後半、というか最大のネタバレは明日。

また読んでやってね。