うそとほんとすなとねこ

風の向くまま気の向くまま、自称読書家が今まで読んだ本を羅列する程度のブログです。

三谷幸喜「清須会議」【映画】

どうも、沙猫です。
今日はこないだの予告通り、私が最近見て気に入った映画について語ろうと思います。皆ご存じな、こぢんまりとした楽しいやつですよ。

それでは聞いてください、三谷幸喜清須会議」。

 

この映画は、コメディ映画監督の三谷幸喜氏が手掛けた、同名の歴史小説を下敷きにしたものです。

 織田信長とその長男・信忠が本能寺の変で没し、家臣団は彼の後継者探しで大わらわ。筆頭家老の柴田勝家(演:役所広司)は三男の信孝を、羽柴秀吉(演:大泉洋)は次男の信勝を推薦し、我こそがその後見人に(という名目で政権を握ろう)と立候補します。根回しや討論にもぬかりなく、双方一歩も譲りません。

 だがしかし、信孝は気位が高く、信勝は欠伸が出る程のバカ殿。

 更に会議には、信長の妹・お市の方(演:鈴木京香)や乳兄弟の池田恒興(演:佐藤浩市)、信忠の妻である松姫(演:剛力彩芽)の思惑も加わって……

 

 

 

以下、沙猫の独自研究とネタバレです。学校のレポートにこいつを使おうとしてる人、これからデーブイデーを見ようとしてる人、逃げるなら今の内ですよ。

 

 

 

 清須会議は、日本で初めて歴史を動かした「会議」だといわれています。確かに、賄賂お土産を関係者に渡したり、宴会を開いて部下の信用を得たり、現代の「会議あるある」に通じるものがありますね。まさか安土桃山時代に現代語はなかったと思うけど……

 

 前に私は弊ブログで『レインツリーの国』を、コミュニケーション小説だと申しました。この『清須会議』とてコミュニケーション小説といって差し支えないでしょう。「戦い」よりも効率よく自分の道理を通す、突然の緊急事態が生んだ、知略と話術の「闘い」。まさに言葉のドッジボール

 

 作中、洋泉さん演じる秀吉は言いました。

 

  柴田くん、こいつは君ひとりのプライドの問題じゃないぞぉ、わかるかい。こいつはだね、天下を治める「正当な織田家の後継者」を探すためのもんなんだよ。

  力云々で全てを決める時代は終わったんだって、ボカァ真剣に言ってんだよ。

※こんな話し方はしていません

 

 ……そう、これはそもそも織田家の存続をかけた大問題。信長が死んで落ち着かない今、仲間割れして事を荒立てる暇はございません。前提条件の「血統」を無視して、誰が有能かで跡継ぎを決めるのは勿論、暴力に訴えるのでは、非効率きわまりない矛盾。

 

 嘗て小説家の浅田次郎御大は言いました。

「言葉は諍うためにあるものではなく、諍いをせぬように神が猿どもに与え給うた叡智なのである」小学館文庫『つばさよつばさ』2009年、p.210)

 信長に「猿」と呼ばれた男は浅田御大の言葉通り、清須会議を以て、叡智の本分を証明したのでした。

 

 

 

清須会議 (幻冬舎文庫)

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いつもと違うノリに付き合ってくださり、有り難うございました。
洋泉さんの秀吉公は、お茶目な顔と策士の顔を併せ持ち、ほんとにハマり役ですよ。妻のおね役の中谷美紀さんも別嬪ですよ。